照井りょう(てるいりょう)千葉県松戸市

【市政コラム】松戸市の国民健康保険料が、4年かけて上がります|改定指針を読み解く

松戸のくらしを読み解く

松戸市の国民健康保険料が、4年かけて上がります

値上げの中身と、そこに至った事情を、市が公表した資料の数字で確認していきます。参照した資料は、松戸市国民健康保険料改定指針(令和8年3月31日策定)と、令和8年度国民健康保険料率の公表資料です。

要点

  • 松戸市は令和8年3月31日、「国民健康保険料改定指針」を策定しました。令和8年度から令和11年度まで、毎年保険料率を見直します。
  • 毎年の引き上げ幅はひとりあたり9,500円程度。これに、国の制度で新設された子ども分が上乗せされます。
  • 理由は、不足分を市の一般会計から補ってきた「赤字繰入」を、千葉県全体の方針で令和12年度までにやめることになったためです。
  • 据え置いたままだと、令和12年度には本来の水準との差がひとりあたり40,574円まで広がると市は推計しています。

1 国民健康保険とは何か

日本では、住んでいる人が必ずどれかの公的な医療保険に入る仕組みになっています。会社勤めの人は勤務先の健康保険、75歳以上の人は後期高齢者医療制度。そのどちらにも当てはまらない人、つまり自営業、フリーランス、農林漁業、退職して勤務先の保険を抜けた人、無職の人などが加入するのが国民健康保険(国保)です。松戸市の場合、市と千葉県が一緒に運営しています。

加入者が納める保険料と、国・県・市が出す公費(税金)を財源にして、病院にかかったときの費用を負担します。窓口で払うのは原則3割で、残りの7割はこの財源から病院に支払われます。安くなっているのではなく、加入者全体で分担している、というのが正確な理解です。

保険料の決まり方

国保の保険料は、次の3つを足して計算します。

  • 所得割 前年の所得に応じてかかる分。所得が多いほど大きくなります。
  • 均等割 加入者ひとりにつきいくら、と決まっている分。収入のない家族や子どもにもかかります。
  • 平等割 1世帯あたりいくら、と決まっている分。

さらに、この保険料は用途別に区分されています。自分たちの医療に使う医療分、75歳以上の人の医療制度を支える後期分、40歳から64歳の人だけが負担する介護分。そして令和8年度から、国の制度によって子育て支援分(子ども分)が加わりました。

所得が一定以下の世帯は、均等割と平等割が7割・5割・2割軽減されます。適用には前年の所得申告が済んでいることが必要で、収入がなかった年でも申告は要ります。

2 松戸市の国保財政に起きていること

市の資料が示しているのは、次の3つの動きです。いずれも令和2年度と令和6年度の比較です。

加入者が減っているのは、人口減少というより75歳になった人が後期高齢者医療制度へ移っていくためです。一方、高齢化と医療の高度化で、ひとり当たりの給付費は4年間で約15%増えました。負担する人が減り、かかる費用が増える。この組み合わせで、単年度の収支は令和6年度に19.2億円の赤字になっています。

かんたんに言うと

会費を出す人が1万4千人減ったのに、ひとり当たりの支出は4万円近く増えた。当然、会計は合わなくなります。

3 「赤字繰入」とは何か、なぜやめるのか

足りない分を、市はこれまで2つの方法で補ってきました。国保のために積んでおいた基金の取り崩しと、一般会計からの繰入です。

一般会計は、道路・学校・ごみ処理など市のあらゆる仕事に使う市全体の会計です。そこから国保の会計にお金を移して赤字を埋める。これを赤字繰入と呼びます。

この方法には二つの問題があると指摘されています。ひとつは、会社の健康保険や後期高齢者医療に入っている人、つまり国保の加入者ではない市民の税金で国保の赤字を埋めることになる点。もうひとつは、どれだけ医療費がかかり、それに対していくら保険料を負担しているのかという関係が見えにくくなる点です。

そこで、令和6年4月に施行された「第2期千葉県国民健康保険運営方針」で、この赤字繰入を県全体として令和12年度までに解消すると定められました。松戸市単独の判断ではなく、県の方針に沿った動きです。

背景

国保は平成30年度から、市町村単位の運営に県が加わる形に変わりました。将来的には県内で保険料の水準をそろえていく方向で、その節目が令和12年度です。市によって保険料に差がある状態を、そろえていくということです。

4 据え置いた場合の推計

県は市町村ごとに「収支が合うにはこの水準が必要」という標準保険料を算定しています。松戸市の実際の保険料は、繰入で抑えてきた分これを下回っていて、その差が乖離額です。

市の推計によると、令和7年度決算見込みで標準保険料が133,056円、実際の保険料が115,020円、差は18,036円。ここから保険料を据え置いたまま令和12年度を迎えると、標準保険料が155,594円まで上がる一方で実際の保険料は115,020円のままなので、差は40,574円に開きます。その間に必要な赤字繰入は、令和7年度からの累計で134.3億円という試算です。

差を1年でまとめて埋めれば、その年に4万円を超える負担増になります。

2つの案が検討された

この差を何年かけて埋めるか、市は2案を比較しています。

毎年の改定幅 赤字繰入の累計
据え置いた場合 0円 134.3億円
3か年で解消 10,400円程度 25.4億円
4か年で解消 9,000円程度 32.2億円
採用された方針 9,500円程度 令和8〜11年度で解消

出典:松戸市国民健康保険料改定指針。繰入額は令和7年度からの累計。いずれも子ども分を除いた金額です。

短い期間で解消するほど繰入の総額は小さく済みますが、1年あたりの負担は重くなります。市は4か年案を選びました。理由として指針が挙げているのは、令和8年度に診療報酬が大きくプラス改定されることと、同じ年に子ども分が新設されることです。ただでさえ負担が増える年に、引き上げ幅まで大きくするのは避けた、という説明です。

3か年案は、市が令和7年8月に策定した「松戸市財政運営の基本方針」にある実質単年度収支黒字化3か年計画(令和8〜10年度)に合わせた案でした。なお、子ども分は全額を保険料で賄う前提のため、この推計には含まれていません。

5 改定指針の内容

令和8年3月31日に策定された指針の対象期間は、策定日から令和12年3月31日まで。第2期千葉県国民健康保険運営方針の期間の終わりに合わせてあります。方向性として定められたのは次の3点です。

  • 令和8年度から令和11年度までの各年度に保険料率を改定し、赤字繰入の解消を図る。
  • 毎年の改定幅は、子ども分を除いてひとり当たり9,500円程度とし、急激な負担増にならないよう配慮する。
  • 令和8年度から始まる子ども分は、この9,500円に全額上乗せする。

制度改正などで9,500円を大きく超える引き上げが必要になった場合は、そのつど市長の諮問機関である松戸市国民健康保険運営協議会と協議するとされています。今回の指針自体も、この協議会での審議を踏まえて作られたものです。

ここまでの経緯

  • 平成30年度 国保の運営が、市町村単位から県と市町村が共同で担う形へ移行。
  • 令和6年4月 第2期千葉県国民健康保険運営方針が施行。県全体で令和12年度までに赤字繰入を解消することが決まる。
  • 令和7年8月 松戸市が「財政運営の基本方針」を策定。実質単年度収支の黒字化を掲げる。
  • 令和8年1月 県から令和8年度の納付金・標準保険料率の算定結果(速報値)が示され、市が将来推計を実施。
  • 令和8年3月31日 松戸市国民健康保険料改定指針を策定。
  • 令和8年度〜令和11年度 毎年、ひとり9,500円程度を目安に保険料率を改定。
  • 令和12年度 赤字繰入を解消。県内の保険料水準をそろえる段階へ。

6 令和8年度の保険料率

初年度にあたる令和8年度の料率は、次のとおり決まりました。

区分 令和8年度 令和7年度
医療分 所得割率 7.62% 7.62%
均等割額 27,000円 21,000円
平等割額 18,000円 18,000円
後期分 所得割率 2.86% 2.62%
均等割額 15,000円 12,000円
介護分 所得割率 2.26% 1.81%
均等割額 18,000円 15,000円
子育支援分 所得割率 0.31%
均等割額 1,860円
18歳以上均等割額 140円

出典:松戸市「令和8年度国民健康保険料率について」(令和8年4月24日更新)。介護分は40〜64歳の加入者のみ。

ひとりずつかかる均等割で見ると、医療分が6,000円、後期分が3,000円で合わせて9,000円の増。ここに所得割の引き上げ分が加わって、平均するとひとり当たり9,500円程度になる設計です。実際の金額は所得と世帯人数で変わるので、正確な額は納入通知書または市の早見表で確認してください。

子育支援分は松戸市の値上げではない

表の一番下にある子育支援分は、国の「子ども・子育て支援金制度」が令和8年4月に始まったことによるものです。児童手当の拡充や妊婦のための支援給付などの財源を、全世代・全経済主体で分かち合うという考え方で、国保だけでなく会社の健康保険でも後期高齢者医療でも同じように徴収されます。松戸市が独自に決めた引き上げではありません。

均等割は、加入者全員にかかる1,860円に、18歳以上の人には140円が加わる形です。低所得世帯の軽減は、ほかの区分と同じように適用されます。

整理すると

令和8年度の負担増は、松戸市の判断による分(9,500円程度)と、国の制度による分(子育支援分)の2つが重なっています。市の資料でこの2つを分けて書いているのは、性格が違うためです。

7 引き上げ以外に市が取り組むこと

指針には、保険料の見直しと並行して進める取り組みも書かれています。

  • 医療費適正化施策(支出の抑制) 健診の受診勧奨、重症化予防、ジェネリック医薬品の利用促進など。
  • 保険料収納率の向上(収入の確保) 未納を減らす取り組み。
  • 国への要望 財政支援の拡充によって加入者の負担を軽くするよう求めていく。

また、制度の意義や財政状況、改定の必要性について、市ホームページなどで周知に努めるとも明記されています。

支払いが厳しいときは、早めに相談を

保険料の負担が重いときは、滞納を続ける前に窓口へ相談してください。所得に応じた軽減のほか、失業・災害・病気などの事情による減免や、分割での納付といった相談先があります。滞納が続くと保険証の扱いが変わり、かえって受診しづらくなります。

松戸市 健康医療部 国保年金課
国民健康保険コールセンター 047-712-0141
松戸市根本387番地の5 本館1階

8 おわりに

ニュースの見出しだけを見ると突然の値上げに見えますが、資料をたどると順番があります。加入者が1万4千人減り、ひとり当たりの給付費が4万円近く増え、単年度で19.2億円の赤字になった。その不足を一般会計から埋める方法は公平とはいえないため、県全体でやめることになった。まとめて解消すれば4万円を超える負担増になるので、4年に分けた。そういう流れです。

負担が増えること自体が軽くなるわけではありませんし、家計の厳しい世帯にとって年9,500円は小さな額ではありません。それでも、何がどう決まってこの金額になったのかを知っておけば、納入通知書が届いたときの受け止め方は変わります。市の資料はいずれも公開されているので、気になる方は原典にあたってみてください。

出典

松戸市国民健康保険料改定指針(令和8年3月31日策定)/同 概要版
松戸市「『松戸市国民健康保険料改定指針』の策定について」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/hoken_nenkin/kokuho/oshirase/kokuhoryokaiteisisin.html

松戸市「令和8年度国民健康保険料率について」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/hoken_nenkin/kokuho/oshirase/korona_hokenyuuyo.html

千葉県「第2期千葉県国民健康保険運営方針」/こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度」

本記事の図はいずれも説明用に作成したもので、棒や線の長さは各図の中での比較を示すものです。保険料の正確な金額や手続きは、松戸市の公式ページと納入通知書でご確認ください。

▼令和8年8月千葉豪雨で被災された方への支援情報 更新日(2026年9月10日)
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/anzen_anshin/saigai/hisai.html

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