【市政コラム】松戸市が33億5千万円で買った土地に、市役所は建ちません ― 松戸市庁舎建て替え問題
2026年9月15日
闘う行政書士の照井りょうです。
今回は松戸市役所の建て替えについて記事にしました。
松戸市は2024年9月30日、松戸駅東口の国有地8,745平方メートルを33億5千万円で買いました。市役所の移転先としてです。
その1年半後、2026年3月11日。市は「新庁舎は現在の市役所敷地に建てる」と議会に報告しました。
当然、33億5千万円で買った土地には、市役所は建ちません。
なぜこうなったのか。市が公開している経緯資料をもとに、時系列を整理しました。
松戸市役所の建て替えで、いま決まっていること
33億5千万円
移転先として買った松戸駅東口の土地です。市役所はここには建たないことになり、使い道は決まっていません。
9年0か月
新しい市役所が建つまでの見込み期間です。完成は2035年前後になります。
2027年3月末
その工事に向けて、市役所の機能が松戸駅周辺のビルへ分散します。すでに決まっていることです。
この3つは、松戸市がすでに決めたこと、あるいは決まってしまったことです。
なぜ、こうなったのでしょうか。
市役所の建て替え場所は、2026年3月、現在の市役所敷地に決まりました。かつては松戸駅東口への移転が計画されていましたので、方針が変わったことになります。土地はその移転計画のときに買ったものです。
この記事では、そこに至る経緯を1995年までさかのぼって時系列で並べます。市が公開している資料をもとに、出典のリンクもすべて付けました。
ただ、その前にひとつ申し上げたいことがあります。
冒頭の3つを、どれだけの市民の方がご存じでしょうか。私の周りでは、ほとんど知られていないというのが実感です。ニュースとして流れてはいますが、なぜそうなったのかまで追いかけられている方は多くありません。
私の考え
市民への説明が、足りていないと思います。
資料は公開されています。委員会の議事録も、比較検討の結果も、議員の賛否理由も、市のホームページを探せば出てきます。ですが、探さなければ出てこないというのは、公開しているとは言えても、説明しているとは言いにくいのではないでしょうか。情報は、可能な限り透明にしていくべきだと考えます。
もうひとつ。当面の見通しも、あわせて示していただきたい。新しい市役所が建つのは9年後の見込みです。その間、市役所の窓口はどこへ移るのか。いつから、どの手続きがどこになるのか。9年先の完成予想図より、来年の春に自分がどこへ行けばいいのかのほうが、暮らしには直結します。
以下、市の公開資料をもとにした時系列です。犯人捜しをしたいわけではありません。31年分ありますので、順に見ていきます。
1995年
すべての始まりは、阪神・淡路大震災でした
震災のあった1995年、松戸市は本館と新館の耐震診断を行いました。結果は構造耐震指数(Is値)が0.3。震度6から7程度の大規模地震で倒壊または崩壊するおそれがあると判明します。
翌1996年には耐震補強の設計を委託しますが、新館の補強には制震構法による改修と上部3階の解体が必要と分かり、耐震改修は困難と判断されました。
つまり31年前の時点で、この建物は直せないことが分かっていたわけです。
2015年3月、市は柱の外周をポリエステル繊維で覆う補強工事を実施します。いわゆる包帯工法です。新庁舎の建設までには時間を要することから、耐震性不足に対する「当面の対策」として行われたものでした。
市役所の柱に巻かれているあの包帯は、11年前の「当面」です。
2017年から2024年
移転へ。土地を買うまでが長くかかりました
2017年2月の市議会全員説明会で、市は工事期間中の業務継続などの観点から移転建て替えが望ましいと説明します。移転先は松戸駅東口の「新拠点ゾーン」南側の国有地でした。
ここから土地の取得までが長くなります。
2023年3月29日、関東財務局千葉財務事務所での見積り合わせで、処分価格が30億2千万円に決まります。ところが同年5月26日の臨時会で、この土地を取得する議案は否決されました。
1年後の2024年6月10日、改めて見積り合わせが行われ、価格は33億5千万円になっていました。同月28日の定例会で取得議案が可決され、9月30日に売買契約が締結されます。面積は8,745平方メートルです。
同じ土地です。3億3千万円、高くなりました。なぜ差が出たのかは、公開資料からは読み取れません。
2025年6月
市長選、そして白紙撤回
2025年6月の市長選で、移転計画の白紙撤回を掲げた松戸隆政氏が初当選します。
同じ月の定例会で、市は移転建て替えに関するこれまでの考え方を白紙撤回し、策定中だった新庁舎整備基本計画を一旦中断しました。あわせて、現地建て替えと移転の費用比較を行うプロジェクトチームの設置と、仮庁舎への移転検討を表明しています。
同年9月30日、仮庁舎移転関連経費と費用比較等検討業務の補正予算が可決されました。11月28日には有識者プロジェクトチームの懇談会が始まり、2026年2月26日の第2回で比較検討結果が議論されました。
2026年3月11日
現地建て替えに決まりました
比較の結果は、次のとおりです。
| 現地建て替え (現市役所敷地) |
656億8,000万円 | 9年0か月 |
| 新拠点ゾーンへ 移転 |
711億6,000万円 | 10年6か月 |
差は54億8,000万円と、1年6か月です。いずれも比較のための試算値になります。
市が現地建て替えを選んだ理由は、現在の議会棟や周辺の民間施設を活用して新庁舎の規模を抑えられること、事業費の縮減が見込めること、早く整備に着手できること、それにアクセス道路や災害対策本部の代替施設を確保できることだと説明されています。
市長は議会への報告後、記者団に対し、デジタル化を進めてコンパクトな市役所にしたい、656.8億円という試算をできるだけ下げていきたいと述べています。
2026年6月から8月
動き出しました
2026年6月定例会に、仮庁舎の内装改修、什器購入、清掃や警備、千葉銀行出張所の移転に伴う調査や手数料、そして現市役所敷地での新庁舎整備基本計画の策定を進めるための補正予算7億6,591万4千円が提案され、同月26日に可決されました。
ただし、全会一致ではありません。市議会の賛否公開ページには、現市役所敷地での整備を具体的に進める予算であり現時点では賛成できないとする反対討論や、仮庁舎移転が決まった今はまず新拠点ゾーン整備の方向性を取りまとめ、将来のまちづくりを示したうえで総合的な判断を市民と議会に求めるべきだとして賛成しかねるとする討論が記録されています。賛成の討論も公開されています。
そして2026年8月、新庁舎整備基本計画(現地建て替え)の策定業務を、佐藤総合計画が1億6,990万円(税別)で落札しました。履行期間は2027年12月28日までとなっています。
本館と新館の機能は、松戸ビルヂングや都市綜合開発第3ビルなど松戸駅周辺の賃貸施設へ移ります。移転完了は2027年3月末を目指すとされています。
では、あの土地はどうなるのでしょうか
2026年6月の総務財務常任委員会では、新拠点ゾーン整備基本計画の見直し検討業務の債務負担が審査されました。建て替え場所を現市役所敷地とする考えを示したことを受け、2021年策定の基本計画に位置づけた3つの導入機能をもとに、改めて空間形成を検討するというものです。
つまり、33億5千万円の土地の使い道は、これから決めることになります。
なお同じ6月、市はこの土地の地下から幅40センチメートル程度、高さ3.5メートル以上のコンクリート構造物などを確認し、関東財務局千葉財務事務所長宛てに契約不適合を通知しています。
市役所が建たなくなった以上、この土地に何を置くのかは、松戸駅東口一帯のまちづくりそのものの話になります。検討の結果がいつ示されるのかは、現時点では公表されていません。
これから何が起きるのでしょうか
ここから先は、現時点で市が想定している予定です。まだ動く可能性がありますが、分かっている範囲で並べておきます。
まず、完成までの工程です。
| 2026年度 | 基本計画の策定 仮庁舎の改修工事 |
| 2027年度 | 基本設計 |
| 2028年度 | 事業者の選定 |
| 2029年度 | 実施設計 |
| 2030年度 | 建設工事に着手 |
| 2034年度 | 完成を目指す |
2034年度ですので、遅くとも2035年3月までの完成を目指すことになります。今年生まれた子が小学校を卒業するころ、という時間感覚です。
事業手法はDB方式(設計と施工を一括して発注する方式)の採用が想定されていますが、いま進んでいる基本計画の業務では、従来方式やPFI方式、リース方式、土地建物賃貸借方式なども視野に入れ、民間事業者への聞き取り調査を2回程度行ったうえで整理するとされています。
2027年3月末まで
市役所は、こう分かれます
暮らしに一番早く関わってくるのは、こちらです。耐震性に課題のある本館と新館の機能が、松戸駅周辺のビルへ移ります。2026年度から改修工事を進め、2027年3月末までに順次移転する予定とされています。
仮庁舎の候補として挙げられているのは、次の施設です。
| 松戸ビルヂング 商業棟 | 5,459平方メートル |
| 松戸ビルヂング 事務所棟 | 1,602平方メートル |
| 都市綜合開発第3ビル | 772平方メートル |
| その他 松戸駅周辺の賃貸施設 | 約2,200平方メートル |
合わせて1万平方メートル程度とすることで、本館と新館の共有部を除いた延べ床面積約9,700平方メートルを確保する考えです。年間の賃料は最大で5億4,000万円の見通しとされ、施設の所有者と協議が進められています。
ただし、どの課がどのビルに入るのかは、まだ公表されていません。市民の立場で気になるのは、住民票や戸籍、税、福祉、子育ての窓口がそれぞれどこになるのか、そして根本の現在地には何が残るのかです。ここが決まり次第、改めてお伝えします。
市民が意見を言える場面
見ているだけ、という話ではありません。いくつか入口があります。
ひとつは、市が募集している市民利用スペースについての市民ワークショップです。新しい市役所の中に、市民が使える場所をどう設けるかを話し合うものです。
ふたつめは、市長の諮問機関である庁舎整備検討委員会です。ここには市民公募の委員も入っており、会議は傍聴できます。資料と議事録も公開されます。
みっつめは、市議会の庁舎整備に関する特別委員会です。予算や方針は最終的にここを通ります。傍聴もできますし、後日資料と議事録が公開されます。
そして、基本計画がまとまる段階では、これまでの例からするとパブリックコメントが実施される可能性が高いと思われます。2027年12月が基本計画の期限ですので、その前後が意見を出す機会になります。
最後に
この31年を並べて感じますのは、誰かが極端に間違えたという話ではない、ということです。耐震診断も、移転案も、否決も、白紙撤回も、それぞれの時点では筋が通っています。
ただ、結果として31年が経ちました。その間ずっと、市役所の柱には包帯が巻かれたままです。
次の判断は基本計画です。2027年12月までに、現地建て替えの中身が固まります。そのときまでに、市民がもっと知らされている状態になっていてほしい。そう願っております。
出典
本文中のリンク先一覧です。数字や日付は、できるかぎり市の公開資料で確認しています。
新庁舎整備と新拠点ゾーン整備に関するこれまでの経緯について
松戸市/2026年7月28日更新。年表の大半はこのページに基づいています
新庁舎の整備について
松戸市/関連ページの入口
市庁舎本館・新館柱補強その他工事
松戸市/2015年の包帯工法について
国有財産の売買契約について(PDF)
松戸市/8,745平方メートル・33億5千万円
新庁舎建て替え場所比較検討に係る有識者プロジェクトチーム懇談会
松戸市/第1回・第2回の資料
「新庁舎建て替え場所比較検討結果を踏まえた市の考え方」市民周知(オープンハウス方式)
松戸市/3月11日特別委員会の配布資料PDFもここから
市役所新庁舎建て替え場所比較検討結果表(PDF)
松戸市都市再生部/令和8年1月
令和8年6月定例会 議案第3号 賛否理由・討論(反対/PDF)
松戸市議会
同 賛否理由・討論(反対/PDF)
松戸市議会
同 賛否理由・討論(賛成/PDF)
松戸市議会
松戸新庁舎 現地建て替え 市が方針「移転」から転換
東京新聞デジタル/2026年3月12日
松戸市役所、現地建て替えへ 市長選経て再検討
朝日れすかPLUS/2026年3月
千葉・松戸市の新庁舎、現地建て替えに決定 事業費650億円超
建設通信新聞Digital/2026年3月12日
佐藤総合に決定/松戸市の新庁舎整備基本計画
建設通信新聞Digital/2026年8月25日
27年3月までに移転/松戸駅周辺ビルを仮庁舎に/新庁舎はプロジェクトチームで検討
日本工業経済新聞社/仮庁舎の候補施設と面積、年間賃料の見通し
事業手法幅広く検討/整備基本計画策定を公告/新庁舎の現地建て替え
日本工業経済新聞社/基本計画業務の内容と検討する事業手法
この記事は2026年9月時点で公開されている資料に基づいています。事業費はいずれも比較検討時点の試算値であり、確定した金額ではありません。