照井りょう(てるいりょう)千葉県松戸市

【市政コラム】矢切に「道の駅」はつくれるのか——耕地の未来をめぐるもうひとつの選択肢

こんにちは。闘う行政書士の照井りょうです。

松戸市矢切。江戸川沿いに約100ヘクタールの耕地が広がり、市内で唯一まとまった農地が残る場所です。
矢切ねぎの産地であり、矢切の渡しと『野菊の墓』の舞台でもある。常磐線や北総線の車窓から見えるあの緑を、松戸の風景として記憶している方も多いはずです。

いま、この場所の使い道が問われています。

議論はすでに次の段階にある
2017年に民間の物流拠点整備構想が表面化して以来、矢切の土地利用は市を二分してきました。
ただ、制度の現在地は正確に押さえておく必要があります。

市は2024年4月の「都市計画マスタープラン(市街化調整区域編)」で、まとまった農地の存在と浸水リスクを理由に矢切地区を市街化区域には編入せず、地区計画で対応する方針を示しました。
2025年4月には地区計画ガイドラインが定められ、矢切地区が唯一の適用候補地になっています。
区域は「国道6号からおおむね400メートル以内」、開発は原則「10ヘクタール以上20ヘクタール未満」の一体開発とされました。

市は、全面保全でも全面開発でもない、位置と面積を絞った限定開発の枠を用意しました。
争点はすでに「開発するかしないか」ではなく、「どこに、どんな条件で、何をつくるのか」に移っています。

農地を残したまま拠点をつくる
物流施設への対案として一部の市民側から提唱されているのが、農業振興と道の駅、矢切の渡し公園の整備をセットにする構想です。
耕地を保全対象として囲い込むのではなく、直売・観光・交流の拠点をつくり、農業を続けること自体に経済的な理由を与えるという発想です。

これは的を射た提案だと思います。
矢切の耕作放棄地は市内全体の相当部分を占め、後継者不足は現実で、補助金だけで風景を守るモデルには限界がある。
「守る」ではなく「稼げるから残る」構造をつくれるなら、そのほうが持続します。

材料は揃っています。矢切ねぎというブランド。矢切の渡しの知名度。
対岸は葛飾区柴又で、渡船で直接つながっています。
そして背後には東京という市場が存在し、都市近郊型の直売拠点として、条件は恵まれています。

ただし2キロ先に「道の駅いちかわ」がある
一方で、正面から見ておくべき事実もあります。
道の駅いちかわは市川市国分にあり、矢切駅からの直線距離は約2キロ。市境を挟んで背中合わせで、これは「近隣」ではなく同一商圏です。

ここで誤解されやすいのですが、国土交通省の「道の駅」登録・案内要綱に距離の数値基準はありません。
設置位置について定められているのは、休憩施設としての利用しやすさと「道の駅」相互の機能分担の観点から適切な位置にあること、という一文だけです。

問われているのは距離ではなく、役割が違うかどうか。裏返せば、いちかわと同じ「物販+飲食+観光案内」を2キロ先につくる提案は通りません。

そんため、差別化の軸ははっきりしていると考えます。
いちかわは国道298号沿いの、施設内で完結する立ち寄り型。物販の主力は市川の梨とイタリア野菜です。
対して矢切は国道6号沿いで、外に出ていく資源——耕地、斜面林、江戸川堤、渡船、柴又との連携——を持つ滞在型になりうる。
産品もねぎで重複しない。加えて外環の松戸インターは京葉・高谷方面のみのハーフインターチェンジなので、三郷・常磐方面からの車は国道6号を走ってくるしかありません。
いちかわが構造的に取れない交通が、6号にはあるのではないでしょうか。

関門は「取付け」と「道と川の距離」?
最大の実務的関門は、国道6号への接続ではないでしょうか。
道路管理者と共同で整備する「一体型」なら、駐車場も6号への取付け工事も道路管理者の事業になり、技術的にも財政的にも道が開けます。
市が単独で行う「単独型」だと、直轄国道への新規出入口の協議も用地費も市が抱えることになります。

もうひとつ、構想には内在する矛盾があるのではないか思います。
道の駅として登録するには国道か県道沿いに置く必要がありますが、核となる矢切の渡しは、6号から1.5キロ西です。
この東西1.5キロを歩行者・自転車の軸として繋げなければ、耕地とも川とも無関係な沿道商業施設ができるだけになります。

二者択一なのだろうか
耕地は約100ヘクタール、地区計画が開発を認めるのは10〜20ヘクタール。
単純計算で8割前後は対象外に残ります。道の駅に必要な面積は数ヘクタールです。

そもそも道の駅いちかわが整備された背景には、外環道でトラック運転手の休憩場所が不足していた事情がありました。矢切に物流施設ができれば、その運転手は道の駅の利用者になるという見方もできます。

もちろん、両立が成り立つかどうかは、実際の区域設定や交通処理、地権者の意向次第で、ここで結論を出せる話ではありません。
ただ、「物流か道の駅か」という問いの立て方そのものが、検討の余地を狭めていないか。一度立ち止まって考えてみる価値はあるように思います。

矢切について本当に問われているのは、賛成か反対かの表明ではなく、地区計画に何をどう書き込むかだと考えております。

▼令和8年8月千葉豪雨で被災された方への支援情報 更新日(2026年9月5日)
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/anzen_anshin/saigai/hisai.html

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