照井りょう(てるいりょう)千葉県松戸市

【市政コラム】ハザードマップが「白い」から安全ではないー江戸川が氾濫したら、松戸はどうなるのか

こんにちは。闘う行政書士の照井りょう(てるい りょう)です。

2026年8月13日から14日にかけての「令和8年8月千葉豪雨」で、被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

この記事でわかること

  • 江戸川が氾濫したとき、松戸市はどこまで水に浸かるのか
  • なぜ「水深」より「4日間」のほうが怖いのか
  • 松戸で本当によく起きているのは、実は江戸川の氾濫ではないこと
  • 今日5分でできる、3つの備え

この豪雨で松戸市には災害救助法が適用されました(適用日:令和8年8月13日/内閣府)。市内では最大33か所の避難所が開設され、最大123人が避難されました。9月1日時点でも、1か所の避難所に3世帯4人が身を寄せられています(千葉県防災危機管理部 第22報)。

松戸市の被害(千葉県発表・9月1日16時時点の暫定値)

床上浸水 70
床下浸水 397
軽傷 5

発生直後の速報(市発表として報じられた8月14日13時時点)

道路冠水 89 か所
消防の救助対応 123

※住家の浸水被害は、発生直後の速報(床上20棟・床下53棟)から大きく増えています。棟数は今後も変わる可能性があります。市の災害対策本部は8月13日19時30分に設置され、8月19日15時30分に解除されました。松戸駅にほど近い宮前町のアンダーパスは、水深約1mまで水没しました。

そして内閣府の資料(9月9日12時時点)には、松戸市で医療施設1か所、高齢者関係施設3か所、障害者関係施設2か所、児童福祉施設等4か所、障害児施設1か所が浸水などの被害を受け、薬局3施設が床上浸水したと記載されています。私が政策の一丁目一番地に掲げている「制度の狭間で支援が届かない方」に、災害が真っ先に届いてしまうという現実が、まさに数字として表れています。

この記事では、松戸市の水害リスクを一次資料に基づいて整理し、私たちが何をすべきかを考えます。地味な話ですが、命に直結する話です。どうか最後までお付き合いください。

1. 江戸川が氾濫したら、松戸市はどうなるのか

まず、最大級のリスクである江戸川の氾濫から見ていきます。国土交通省が公表している洪水浸水想定区域図には、2つの想定があります。

想定最大規模

利根川流域・八斗島(やったじま)上流域で

72時間の総雨量 491mm

年超過確率は図面に記載なし。「想定し得る最大規模」という位置づけです。

計画規模

同じく八斗島上流域で

72時間の総雨量 336mm

年超過確率 1/200(毎年0.5%の確率で起こりうる規模)

では、このうち「想定最大規模」のときに松戸市がどうなるのか。
松戸市地域防災計画 風水害等編(令和8年度修正)には、はっきりこう書かれています。

想定最大規模の洪水では、
常磐線より西側の低地で水深5m以上の範囲が広がり、
特に栄町西周辺などで水深7.5m以上となる

── 松戸市地域防災計画 風水害等編(令和8年度修正)

水深5mは、2階建て住宅の屋根近くまで。7.5mとなれば、3階建てでも安全とは言えません。

もっと深刻なのは「4日間、水が引かない」こと

同じ計画に、浸水がどれくらい続くかも書かれています。

常磐線の西側のほとんどの範囲で

4日間

水が引きません

この「4日間」という数字を、ぜひ具体的に想像していただきたいのです。

4日間、水が引かない。ということは、垂直避難で2階・3階に上がったとして、そこで4日間過ごさなければならないということです。電気は止まり、エレベーターは動かず、水道もトイレも使えない可能性が高い。真夏ならエアコンなしで、真冬なら暖房なしで。持病の薬が切れても、粉ミルクが尽きても、助けはすぐには来ません。

「上に逃げれば大丈夫」は、半分しか正しくありません。4日分の備えを持って上に逃げられるかが問われます。

江戸川から500m以内は「家屋倒壊等氾濫想定区域」

さらに、松戸市地域防災計画にはこうあります。

江戸川からおよそ500mの範囲が「氾濫流」による想定区域となる。なお、「河岸浸食」による想定区域はない

── 同上

氾濫流による家屋倒壊等氾濫想定区域とは、木造家屋が流されて倒壊するおそれがある範囲のことです。

ここは垂直避難では対応できません。
早期の立退き避難、つまり水平方向に、水の来ない場所へ移動する必要があります。

河岸浸食による区域が指定されていないことは、松戸市にとって数少ない好条件ですが、氾濫流の500mは決して小さな範囲ではありません。

2. 実は、松戸で頻発しているのは「内水氾濫」

ここが今回の8月豪雨とも直結する、最も重要な論点です。

江戸川の堤防決壊は、確率としては極めて低い出来事です。一方で、松戸市で繰り返し起きているのは内水氾濫──下水道や水路の排水能力を超えた雨が、街の中で溢れる都市型水害です。

松戸市地域防災計画には、過去の被害の地域性がこう記されています。

昭和56年以降、松戸市で発生した主な水害の地域性をみると、西馬橋2・3丁目、中和倉、新作など長津川沿いの谷底平野や、秋山、河原塚、日暮、五香などの春木川沿いの谷底平野でも床上浸水が多く発生している

── 松戸市地域防災計画 風水害等編(令和8年度修正)

お気づきでしょうか。ここに挙がっている地名の多くは、江戸川からは離れた場所です。五香や日暮といえば、常磐線の東側、いわゆる「台地の上」というイメージをお持ちの方も多いはずです。

台地の上にも、谷はあります。そして雨水は谷に集まります。

「うちは高台だから」は、
内水氾濫には通用しません。

松戸市の内水ハザードマップは、3つの降雨ケースを想定しています。

1時間 71mm 千葉の観測史上最大(昭和50年10月5日)
1時間 105mm
1時間 153mm → 場所によっては最大3mを超える浸水

地域防災計画には、「1時間あたり153mmの大雨では、場所によっては道路や宅地において最大3mを超える浸水深が予測される」と書かれています。

道路が3m冠水すれば、車は完全に水没します。アンダーパスであれば、それは水没した箱の中に入っていくのと同じことです。今回の豪雨でも宮前町のアンダーパスが水深約1mまで水没し、市内では車内に閉じ込められたドライバーを消防が救助する事態も起きました。

絶対に守ってください

冠水した道路には、
絶対に車で進入しない。

3. 今すぐやっていただきたい3つのこと

(1)自宅と職場、通学路を「やさシティマップ」で確認する

松戸市の水害ハザードマップは、江戸川・利根運河・坂川・真間川・高潮・内水の各想定を重ねたものです。紙のマップだと自分の家がどこか分かりにくいのですが、市の「やさシティマップ(地図情報提供システム)」なら住所単位で確認できます。

確認していただきたいのは3か所
① ご自宅 ② 職場 ③ お子さんの通学路と学校
自宅が安全でも、日中に被災すれば意味がありません。

(2)避難先を「2つ」決めておく

松戸市には指定緊急避難場所・指定避難所が126施設(指定緊急避難場所19か所・指定避難所107か所/2026年9月3日更新の市一覧)あります。ただし、市の一覧には見落としてはいけない注記があります。

浸水想定区域内にある収容避難所については、3階以上の建物を表示しています。(浸水想定区域内は、あくまでも緊急避難用です。)

── 松戸市「指定緊急避難場所・指定避難所一覧」

つまり「近所の小学校が避難所だから大丈夫」とは限りません。そこが浸水想定区域内なら、あくまで緊急用です。市のハザードマップでは「垂直避難場所」を高さ5m以上の施設として別に示しています。

そして最も現実的で確実な避難先は、親戚・知人の家です。
常磐線の東側、台地の上にお住まいの親戚がいらっしゃるなら、今のうちに「いざというとき泊めてほしい」と話をつけておく。これが一番強い備えになります。

(3)情報の入口を確保する

手段 内容
防災行政無線
音声自動応答
0800-800-9366
フリーダイヤル。放送が聞き取れなかったときに
松戸市
安全安心メール
災害・不審者・犯罪情報を配信(要登録
NHK
データ放送
リモコンの「dボタン」→「地域の防災・生活情報」
緊急速報
(エリアメール)
登録不要・通信料無料
災害用
伝言ダイヤル
171
市公式SNS 松戸市公式X(旧Twitter)・Facebook

雨風が強いと、防災行政無線はまず聞こえません。0800-800-9366は、今すぐスマホに登録しておいてください。安全安心メールの登録も、5分で終わります。

4. 市政の課題として、私が考えていること

ここからは、一人の市民として、そして行政の実務に関わってきた者として、率直に申し上げます。

課題1松戸市には「広域避難計画」がない

東京の江東5区(墨田・江東・足立・葛飾・江戸川)には、大規模水害時に区外へ逃げることを前提とした広域避難計画があります。内閣府と東京都も首都圏17区を対象としたモデルを作っています。

松戸市は、そのいずれにも
含まれていません。

松戸市地域防災計画(令和8年度修正)に書かれているのは、市内の避難場所への立退きが困難な場合に「災害対策基本法による広域避難を実施する」とし、県内の他市町村に受入れを要請するときは県に報告して当該市町村と協議する、という手続きです。避難先の自治体名も、輸送手段も、判断基準も書かれていません。

松戸市は「江戸川流域大規模氾濫に関する減災対策協議会」の構成員であり、同協議会の取組方針にも「氾濫形態に応じた隣接市区町における避難場所の設定(広域避難体制の構築)」が課題として掲げられています。課題としては認識されている。しかし、形になっていない。

照井の提案

幸い、松戸市には常磐線東側の台地という「市内の逃げ場」があります。江東5区のように市外へ出るしかない自治体とは条件が違う。だからこそ「市内のどこへ、どのルートで、誰が逃げるのか」という市内広域避難の設計は、松戸市なら作れるはずです。台地側の学校・公共施設の受入可能人数と、低地側の対象人口を突き合わせるところから始められます。

課題2備蓄が「何人分・何日分」か分からない

松戸市の防災ページの更新日を確認すると、次のようになっています(2026年9月11日確認)。

ページ 最終更新
指定緊急避難場所・指定避難所一覧 2026年9月3日
災害用備蓄品の整備状況 2023年9月1日

避難場所の一覧は、豪雨の後に更新されました。地域防災計画も令和8年度修正版(2026年6月)が公開されています。

一方、備蓄のページには、拠点倉庫4か所と小中学校等70か所の分散備蓄倉庫があること、小中学校の倉庫1か所あたりの品目と数量(アルファ米800食、ビスケット606食、おかゆ200食、500ミリリットルの水360本など)が掲載されています。しかし市全体で何人分の食料と水を、何日分持っているのかという形では示されていません。

照井の提案

江戸川氾濫時の浸水継続が4日間と想定されているのなら、「その4日間を、何人分まかなえるのか」は市民が知る権利のある数字です。まず公表すること。予算はほとんどかかりません。

課題3「地図が白い」場所の被害をどう扱うか

ウェザーニューズが今回の豪雨について行った分析によれば、8月13日14時〜24時に千葉県内から寄せられたウェザーリポート9,938件のうち、被害を示す内容を含むものの内訳はこうでした。

「低位地帯または浸水想定区域」のから

55.7%

区域のから

44.3%

※ウェザーニューズ「令和8年8月千葉豪雨、2人に1人が浸水想定区域”外”で被災か」(2026年8月15日)より。なお同社の分析では、松戸市は市原市とともに浸水想定区域内からの被害報告の割合が高かった市として挙げられています。

つまり松戸市の場合、ハザードマップは相応に機能していた。それでも県全体で見れば、半数以上の被害は、地図が「白い」場所で起きているのです。

ハザードマップは河川の氾濫を主眼に作られており、局所的な内水氾濫を完全には表現しきれません。結果として、白い地図を見て安心した人が被災する。松戸市も例外ではありません。前述の通り、五香や日暮といった台地側の谷筋で、過去に繰り返し床上浸水が起きています。

照井の提案

洪水と内水のマップを1枚に統合し、「この地図が白くても浸水する場合があります」という注意を大きく書く。
平成18年度以降の浸水実績を、今回の8月豪雨の分も含めて速やかに更新・公表する。
「実際にここで水が出た」という記録ほど、説得力のある防災情報はありません。

5. 地震についても一言

水害と併せて、松戸市が想定している地震にも触れておきます。

松戸市耐震改修促進計画(令和8年3月)によれば、市が想定しているのは松戸市直下の地震 M7.1(震源の深さ5km程度)で、市内は震度6強を5段階に細分して表示するレベルです。

被害想定(松戸市防災アセスメント調査 令和2年3月/冬18時・風速8m/s)は次の通りです。

全壊 3,991
半壊 14,808
炎上出火 49
焼失(参考) 2,545

また松戸市には、令和7年3月時点で土砂災害警戒区域が237か所(うち特別警戒区域155か所)あります。台地と谷が入り組んだ松戸の地形は、豊かな緑をもたらす一方で、崖崩れのリスクとも隣り合わせです。

まとめ

  • 江戸川の想定最大規模で、常磐線西側の低地は水深5m以上、栄町西周辺は7.5m以上
  • 浸水が続く時間は、常磐線西側のほとんどで4日間
  • 江戸川からおよそ500mは家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流)。立退き避難が必要
  • 実際に繰り返し起きているのは内水氾濫。長津川沿い・春木川沿いの谷で床上浸水が多発
  • 今回の大雨では、県内の被害リポートの55.7%が「低位地帯または浸水想定区域」の外から
  • 避難場所・避難所126施設のうち、浸水想定区域内のものは「緊急避難用」
  • 松戸市に具体的な広域避難計画はなく、備蓄が「何人分・何日分」かも公表されていない

防災は、票にならない政策の代表格だと言われます。何も起きなければ「無駄だった」と言われ、起きてしまえば「なぜ備えていなかった」と言われる。

それでも私は、防災・治安を政策の三本柱の一つに掲げています。制度の狭間で支援が届かない方──高齢の一人暮らしの方、医療的ケアが必要なお子さんとご家族、日本語での避難情報が届きにくい外国人の方──にとって、災害は真っ先に、そして最も重くのしかかるからです。

今日、5分でできること

1. ご自宅の住所を「やさシティマップ」で調べる

2. 0800-800-9366 をスマホに登録する

3. 松戸市安全安心メールに登録する

そして、地域で「ここは昔から水が出る」「この道は必ず冠水する」といった情報をお持ちの方は、ぜひお聞かせください。地図に載っていない土地の記憶こそが、次の被害を防ぎます。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考・出典

※本記事は2026年9月11日時点で公開されている情報をもとに更新しています。住家被害の棟数は千葉県が9月1日に発表した暫定値で、今後も変わる可能性があります(千葉県はその後、9月7日に第24報を発表しています)。道路冠水・救助対応の件数は、市発表として報じられた8月14日13時時点の速報値です。松戸市の被災された方への支援制度については、市の公式サイト・危機管理課(047-366-7309)で最新情報を必ずご確認ください。

▼令和8年8月千葉豪雨で被災された方への支援情報 更新日(2026年9月10日)
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/anzen_anshin/saigai/hisai.html

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