照井りょう(てるいりょう)千葉県松戸市

救急車を呼んでから、病院に着くまで何分?|松戸の救急搬送と、受け入れ先が決まらない問題

家族が突然倒れた。胸を押さえて苦しんでいる。震える手で119番に電話をかけ、救急車が来たときの安心感。
けれども、救急車が来てもすぐには動き出さず、隊員が電話で病院を探し続けている。
そんな経験をした方もいるのではないでしょうか。

救急車を呼んでから病院に着くまで、松戸ではどれくらいの時間がかかっているのか。国と市の統計から確かめてみました。

■ 松戸市は、病院に着くまで約60分

国の統計によると、2024年に松戸市で119番通報を受けてから、患者が病院に収容されるまでにかかった時間は、平均59.6分でした。

全国平均は44.6分です。松戸市は全国平均より15分長く、近隣の船橋市(58.7分)、千葉市(55.9分)、市川市(50.2分)、柏市(47.7分)と比べても、最も長い時間がかかっています。

■ 救急車はすぐ来る。時間がかかるのは「その後」

ただ、救急車が遅いわけではありません。119番通報から救急車が現場に着くまでの時間は、松戸市が平均9.9分、全国平均が9.8分で、ほとんど変わりません。

差がつくのは、救急車が現場に着いてから病院に入るまでの時間です。
松戸市では約50分、全国では約35分。その差は、およそ15分です。

現場に着いた救急隊は、患者の状態を確かめ、応急処置をしながら、受け入れてくれる病院を電話で探します。病院が見つかれば、そこへ向かいます。
この「受け入れ先を探す時間」が長くなるほど、病院に着くまでの時間も延びていきます。

■ 千葉県は、受け入れ先が決まりにくい県

国は毎年、重症以上の患者を搬送したときに、受け入れ先がすぐに決まらなかったケースを調べています。

2024年、千葉県で重症以上の患者を搬送したケースのうち、病院への照会が4回以上になったのは8.8%でした。
全国平均は5.4%で、千葉県は全国でワースト4位タイです。

救急隊が現場に30分以上とどまったケースは21.1%にのぼりました。
全国平均10.4%の約2倍で、全国でワースト3位です。重症の患者の5人に1人が、30分以上、現場で病院に向かえずにいたことになります。

■ なぜ、受け入れ先が決まらないのか

受け入れ先が決まりにくい理由として、一般に次のようなことが指摘されています。

・夜間や休日に、救急を担当できる医師が足りない
・必要な専門の医師がその時間にいない
・病院のベッドが満床で、新しい患者を受け入れられない
・高齢の患者が増え、複数の病気を抱えた人の受け入れが難しい

救急の現場で働く医師や看護師、救急隊員の皆さんは、限られた体制の中で懸命に命を救っています。問題は個人の努力ではなく、地域全体の医療の体制にあります。

■ 松戸の救急車は、約17分に1回出動している

松戸市消防局の救急出場件数は、2024年が3万1,585件、2025年が3万856件でした。1日あたり約84.5件、およそ17分に1回、市内のどこかで救急車が出動している計算です。市内を走る救急車は14台です。

市消防局によると、救急車で運ばれた人のおよそ半数は、入院の必要がない軽症でした。
救急車が軽症の搬送に出ている間に、本当に急を要する通報があれば、遠くの救急車が向かうことになります。

もちろん、命に関わるかもしれないときに、ためらって救急車を呼ばないのはいけません。
突然の激しい頭痛、ろれつが回らない、胸の激しい痛み、息苦しさ、手足のしびれなどがあれば、迷わず119番に電話してください。

救急車を呼ぶべきか迷ったときは、千葉県の救急安心電話相談「#7119」に電話すれば、看護師などが24時間相談に応じてくれます。
子どもの場合は「#8000」です。松戸市には、夜間や休日に診てもらえる夜間小児急病センターや休日・夜間の診療所もあります。

■ 松戸市への提案

1 救急搬送の実態を、市として公表する
病院への照会回数、受け入れまでにかかった時間、市外の病院に運ばれた割合など、松戸市の救急搬送の実態を毎年公表し、課題を市民と共有します。

2 総合医療センターの救命救急機能を守る
松戸市立総合医療センターは、重い救急患者を受け入れる地域の要です。経営の立て直しを進めながらも、救命救急の機能だけは確実に守るべきだと考えます。

3 救急病院同士の役割分担と連携を強める
市内の救急病院が、夜間や休日の当番を分担し、受け入れの状況をリアルタイムで共有できる仕組みを強化します。
重症の患者を受け入れた病院が、状態の落ち着いた患者を別の病院に移せるようにし、救命救急のベッドを空けておく連携も進めるべきだと思います。

4 「迷ったら#7119」を、すべての世帯に
#7119や#8000、夜間の診療所の情報を、高齢者の世帯や子育て世帯に繰り返し届けます。救急車が本当に必要な人のところへ、すぐに向かえるようにするためです。

5 高齢者施設や家庭との連携
持病や飲んでいる薬、かかりつけの病院などの情報を、救急隊がすぐに確認できる仕組みを広げます。情報がそろっていれば、受け入れ先を探す時間も短くなります。

■ おわりに

救急車は、119番から10分ほどで駆けつけてくれます。
しかし、松戸ではそこから病院に入るまでに、全国平均より15分長い時間がかかっています。

急病のときの15分は、命や後遺症を左右しかねない時間です。
この15分を縮めることは、救急隊や病院の努力だけでは限界があります。地域の医療の体制を、市が中心になって支えていく必要があります。

以前の記事で、松戸市立総合医療センターの経営の問題を取り上げました。
救急搬送の問題は、その記事と地続きのテーマです。「いざというとき、すぐに病院に入れる松戸」を目指して、これからも取り組んでいきたいと考えています。

参考文献

消防庁「令和6年中の救急業務における消防本部別実施状況」
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-174/03/sankou2.pdf
消防庁「重症以上傷病者搬送事案における医療機関の受入れ状況等実態調査(令和6年中)」
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-174/03/sankou1.pdf
消防庁「令和7年版 消防白書 救急体制」
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r7/report4/69320.html
消防庁「令和7年版 救急・救助の現況」の公表(令和8年1月)
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/kyuuki_20260116.pdf
松戸市消防局「松戸市の救急の概要(確定値)」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/matfd/toukei/kyuukyuu_joukyou/kyukyu_gaiyou.html
松戸市消防局「救急車の適時・適切な利用」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/matfd/kyuukyuu/kyuukyuusha/tekiseiriyou.html
松戸市消防局「消防年報 令和6年度」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/matfd/toukei/nenpou/reiwa6nenpou.files/Chapter0_Introduction.pdf

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