照井りょう(てるいりょう)千葉県松戸市

「PTAをぶっ壊す」とは言いません。ただ、軽くすべきです|松戸市のPTAを考える

こんにちは。闘う行政書士の照井りょうです。

PTAの話をすると、たいてい空気が重くなります。役員決めのくじ引き、平日昼間の会議、ベルマークの仕分け。負担の話ばかりが語られ、では何のためにあるのかという話には、なかなかたどり着きません。

先に結論を述べます。
PTAをなくせとか、ぶっ壊せとは言いません。ただ、いまPTAが抱え込んでいる機能の多くは、もっと適した受け皿に移すべきだと考えます。そして残ったPTAは、思い切って身軽にする。松戸市には、その移し先が既に用意されているからです。

■ 現状1 市P連に加盟しているのは、市立小中学校の約半数

まずは数字から。

松戸市PTA連絡協議会(市P連)は、松戸市立小中学校のPTAをつなぐ組織で、33校のPTAが加盟し、情報交換や親睦、学びのための場を作っているとされています。
第51回を数える松戸市PTA音楽祭など、歴史ある活動も続けています。

一方、松戸市立の小中学校は60校を超えます。
つまり市P連に加盟しているのは、学校全体のおよそ半数です。

かつてPTAは全校加盟が前提の組織でした。半数という状態は、すでに全体組織として機能していないことを意味します。
この事実から目を背けたまま、組織の維持だけを議論しても意味がありません。

■ 現状2 市内で既に起きている再編

松戸市内には、PTAのあり方を根本から見直した学校があります。

松戸市立栗ケ沢小学校では、従来のPTAを改め、保護者の会として運営する形に切り替えました。
保護者の加入を任意制にしただけでなく、教職員の自動入会もやめ、お金を預かり意思決定を行う中核メンバーのみを会員とする仕組みにしています。

さらに注目すべきは市P連からの脱退です。
会費を払うことが子どもや会員のためになっていると感じられなかったため脱退を決め、単位PTAの困りごとに寄り添う市P連になってほしいと申し入れた、と説明されています。

これは松戸だけの現象ではありません。人手や加盟費の負担、意義を感じないという理由でP連を脱退する単位PTAは全国に出ています。

現場は既に動いています。問われているのは、この動きを追認するのか、それとも設計し直すのかです。

■ 課題の抽出

資料を追っていくと、課題は5つに整理できます。

第一に、目的の不在。
何のための組織かという合意がないまま、前例の活動だけが引き継がれています。

第二に、負担と実質的な強制。
任意団体でありながら全員加入が前提とされ、役員決めが押し付け合いになる。参加意欲を根こそぎ奪う構造です。

第三に、器の分散。
PTA、市P連、学校運営協議会、松戸版コミュニティ・スクール、地区の教育コミュニティ会議、青少年相談員、町会。学校と地域をつなぐ組織が並立し、同じ人材を奪い合っています。

第四に、会計の不透明さ。
PTA会費、市P連への上納金、その使途。総会資料を見ても、何にいくら使われ、どんな成果があったのかが読み取れる形になっていないことが少なくありません。任意団体とはいえ、事実上すべての家庭から集めた会費です。説明責任は当然に生じます。

第五に、持続性の欠如。
1年交代の役員体制では、外部との関係を築いても翌年には途切れます。

■ 提案の全体像

これらを踏まえた提案は、次の3つです。

機能は移す。担い手の受け皿は地域学校協働活動に。
組織は減らす。ベルマーク、広報誌、動員型の行事は廃止する。
お金は透明に。市P連を存続させるなら、会計と成果を公開する。

順に説明します。

■ 提案1 機能は地域学校協働活動へ移す

松戸市には、既に受け皿があります。

市は平成30年度から、既存の学校支援体制を生かし、地域の実態にあった地域と学校の連携をより深化させるため、松戸版コミュニティ・スクールを小金北中学校に導入しました。
同校では世代交流会、ボランティア体験学習、子育てふれあい教室などが行われています。

その母体である小金北中学区教育コミュニティ会議は、1995年に設立された地域連携型組織で、教育相談、世代交流会、ボランティア体験活動などを30年にわたり継続。
千葉県のライトブルー賞育成功労の部で、新設部門の初の受賞団体となりました。

また令和4年4月には、法定の学校運営協議会が小金小学校に設置されています。

つまり松戸には、地域と学校をつなぐ仕組みが既にあるのです。
しかもこちらには利点があります。地域学校協働活動は国が推進する枠組みで、コーディネーター役として地域学校協働活動推進員を教育委員会が委嘱でき、有償で位置づけることができます。
1年交代の無償ボランティアに依存するPTAより、明らかに持続性で勝ります。

ここに移すべき機能は、たとえば次のようなものです。

登下校の見守り、地域行事との連絡調整、学校支援のボランティア募集、そして体験プログラムの取次ぎ。

とりわけ体験プログラムは、松戸の資源を活かせる分野です。市内には市民農園が23か所2,432区画あり、オーナー農園や体験農園も運営されています。
農業者側には援農ボランティアを受け入れたい意向もあります。21世紀の森と広場のような施設もあります。

農作業体験、職場体験、施設見学。こうした機会を子どもと家族に届ける窓口は、地域に根を張り、継続性のあるコーディネーターが担う方が明らかに機能します。

■ 提案2 PTAは徹底して軽量化する

機能を移せば、PTAは身軽になれます。むしろ、軽くすることを目的に据えるべきです。

やめるべきものを具体的に挙げます。

ベルマーク活動。集計にかかる労力と回収額を比べれば、割に合わないことは多くの試算で示されています。同じ時間を別のことに使う方が、子どものためになります。

紙の広報誌。編集、印刷、配布に大きな労力がかかります。連絡はデジタルで足ります。

動員型の当番。人数合わせのために出席を求める会議、持ち回りの役職、形式的な挨拶回り。

通年の役員制度そのもの。プロジェクト単位の募集に切り替えれば、「1年間拘束される」という最大の心理的障壁がなくなります。

残すのは、本当に保護者でなければできないことだけです。保護者の声を学校に伝える窓口、卒業関連など保護者主体で担うべき行事、そして緊急時の連絡網。
それ以外は、疑ってかかるくらいでちょうどいい。

軽量化は妥協ではありません。組織を小さくすることで、残った活動の意味がはっきりします。

■ 提案3 市P連は透明性を高め、存在意義を証明する

市P連についても踏み込みます。

加盟しているのが半数という現状は、残る半数が「加盟する理由を見いだせない」と判断した結果です。
この評価を覆すには、二つのことが必要です。

ひとつは会計の公開です。
各校からいくら集め、何に使い、どんな成果が出たのか。収支決算書を、加盟校の保護者だけでなく市民が見られる形で公開する。
任意団体であっても、事実上すべての家庭から集めた会費を原資とする以上、当然の説明責任です。
公開できない使途があるなら、それこそが見直すべき対象です。

もうひとつは役割の絞り込みです。
単一校では手が届かない相手との交渉、たとえば市内企業、大学、行政の各部署との連携は、広域組織の方が向いています。
市P連が地域資源のリストを作り、各校に配るだけでも、現場の負担は大きく減ります。

逆に、親睦や研修のための会議を維持することが目的化しているなら、それは解散も含めて検討すべきです。組織が存続すること自体は、誰の利益にもなりません。

■ 実現可能性の検証

耳ざわりの良い提案ほど、冷静に壁を見る必要があります。

追い風は3つあります。制度の受け皿が既にあること。市内に30年の実践例があること。市民農園や農業者という実在の資源があること。ゼロから作る話ではありません。

一方、壁も明確です。

学校の負担を増やさないこと。
市教委自身が学校における働き方改革への理解と協力を呼びかけている状況です。新しい仕組みが教員の窓口業務を増やすなら、本末転倒です。
連絡調整はコーディネーター側で完結させる設計が不可欠です。

安全管理と責任の所在。
校外活動にはけがや事故のリスクがあります。
誰が引率し、保険を誰が掛け、事故時の責任を誰が負うのか。単発イベント向けの保険商品はあるので、活用を前提に設計できます。

平日日中の人手。
動ける大人は限られます。退職世代との協働、土日開催を基本とする設計が現実的です。

そして最大の論点が、公平性です。
PTAが任意加入である以上、プログラムへの参加を会員の子だけに限れば、実質的な加入強制になります。だからこそ、体験プログラムはPTAの事業にしないことが重要です。地域学校協働活動に移し、全ての子どもに開く。
この形であれば、加入の有無と子どもの機会は完全に切り離せます。

機能を移すという提案は、負担軽減のためだけではありません。公平性の問題を根本から解く手段でもあるのです。

■ 現実的な進め方

一斉に変えることはできません。順序を提案します。

第一段階は、各校でのやめる作業です。ベルマーク、広報誌、形骸化した会議。学校単位で判断でき、予算も要りません。今年度からできます。

第二段階は、市P連による地域資源リストの作成と会計の公開。これも会議室でできる作業です。

第三段階は、コミュニティ・スクールの拡大と、地域学校協働活動推進員の委嘱。ここは市の予算と方針が必要になります。議会で問うべき領域です。

第四段階が、体験プログラムの試行。1校でのパイロットから始め、参加者数、負担時間、費用を記録して検証する。

やめることから始めれば、賛同は得やすい。新しいことを始めるのは、余力を作ってからで構いはずです。

■ まとめ

松戸市のPTAは、加盟校が市立小中学校の約半数という状態にあり、市P連を脱退して独自の保護者組織に移行した学校も既に現れています。

必要なのは、PTAを守るための議論ではありません。
子どもと家族を社会につなぐ機能を、誰が、どんな制度で、どう持続的に担うのかという議論です。

その答えとして、機能は地域学校協働活動へ移し、PTAは徹底して軽くする。
市P連は会計を公開し、存在意義を数字で証明する。松戸には、そのための材料が既に揃っています。

組織を守ることと、子どものためになることは、別の話です。

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