【市政コラム】常盤平第一小学校で、入学者が1人だった|学校統廃合は「する・しない」ではなく「どう決めるか」の段階に
2026年9月28日
こんにちは。闘う行政書士の照井りょうです。
令和8年4月、松戸市のある小学校に入学した1年生は、たった1人でした。
常盤平第一小学校。この春の新入学児童が1名だったことで、全校児童数は30名になりました。
一方、同じ松戸市の相模台小学校には870人が通っています。
その差、およそ27倍。同じ市民が同じ税金を払い、同じ市立小学校に子どもを通わせているのに、教育環境はまったく違います。
これは、遠い過疎地の話ではありません。人口50万人の松戸市で、いま現実に起きていることです。

■ 数字で見る、松戸市の学校の姿
令和8年5月1日現在、松戸市立の小学校は45校、児童数は21,691人、学級数は883。中学校は20校、生徒数10,538人、学級数368です。
小学校の児童数を並べてみると、規模の差は歴然としています。
多い順では、相模台小870人、東松戸小719人、小金小699人、東部小692人、高木第二小667人、八ケ崎小661人。
少ない順では、常盤平第一小32人、高木小137人、六実第二小187人、金ケ作小212人、大橋小234人、六実第三小279人。
中学校も同じです。第一中882人、第六中845人、河原塚中792人に対し、金ケ作中163人、根木内中236人、牧野原中274人。
金ケ作中の2年生は1学級36人です。クラス替えという経験が、この学年には存在しません。
■ 国が示す目安と、松戸の現実
国は学校の適正規模について、小中学校とも12学級から18学級を標準としています。
そのうえで、小学校で6学級以下、中学校で3学級以下という規模になった場合には、統合の適否を速やかに検討する必要があるとしています。
1学年1学級では、クラス替えができず、人間関係が6年間固定されます。
教員数も少ないため、専門教科の指導や校務の分担に制約が出ます。運動会や合唱コンクールといった集団活動も、規模によって成立しにくくなります。
もちろん小規模校には良さもあります。一人ひとりに目が届き、学年を超えた交流が生まれ、地域とのつながりも濃い。実際、少人数を評価する保護者は少なくありません。
問題は、その良さが「選んだ結果」なのか「そうなってしまった結果」なのかという点です。
■ 市はすでに動き始めている
松戸市教育委員会は、常盤平第一小学校について、学級には一定規模の児童数を保持することが必要であること、児童数が著しく減少していること、近接して複数の小学校が存在していることを理由に、令和9年度からの通学区域の変更を学区審議会に諮問しました。
新入学児童の受け入れ停止に向けた学区変更の検討です。
あわせて、市全体を対象とした「新しい学校のあり方基本方針」と、「常盤平地区教育環境整備方針」の策定にも取り組むとしています。
つまり、統廃合の議論は「これから始まるかもしれない話」ではなく、すでに具体的に動いている話です。
■ 市民はどう考えているのか
この夏、市は3,000人を無作為抽出した市民アンケートを実施し、1,296人が回答しました(有効回答率43.2%)。結果は、多くの人の予想とは違うかもしれません。
学校の規模と配置の適正化を進めることについて、積極的に進めるべきだが47.2%、どちらかといえば進めるべきだが36.0%。あわせて83.2%が前向きです。
進めるべきではないという回答は、両方合わせても3.8%にとどまりました。
常盤平第一小学校の受け入れ停止についても、賛成が67.6%、反対が7.4%、分からないが22.0%でした。
理由として多く挙がったのは、児童数が少なく教育環境の維持が難しいから(58.3%)、一定規模の学校の方が教育効果が期待できるから(54.7%)というものです。
一方、反対する人の理由は、子どもの通学負担が大きくなるから(43.3%)、受け入れ停止ではなく別の方法を検討すべきだから(34.0%)でした。
学校の望ましい規模についても具体的な回答が出ています。
小学校の1学年あたりの学級数は2から3学級が61.0%、1学級あたりの人数は19人から28人が62.6%。中学校では1学年4から6学級が62.1%。
理由の最多は、クラス替えなどにより多様な人間関係が築けるから(60.9%)でした。
■ しかし、ここに最大の課題がある
同じアンケートで、常盤平第一小学校の学区変更の検討について「今回初めて知った」と答えた人が52.2%。半数以上が、市の最大級の教育政策の動きを知りませんでした。内容まで知っていた人は13.7%です。
賛成が多いことと、理解されていることは別です。知らないまま決まった話は、後から必ず反発を生みます。
これが、松戸市の学校再編における最大の課題だと考えます。
■ 課題を整理する
数字と資料から見えてくる課題は、5つあります。
第一に、教育環境の格差です。
32人の学校と870人の学校が同じ市内にある。クラス替えができない学年がある。これは本人の選択ではありません。
第二に、施設と財政です。
学校施設は市の公共施設の延床面積の50%以上を占め、その多くが昭和40年代から50年代の人口急増期に建てられました。これらが一斉に更新時期を迎えています。校舎を建て替えるのか、長寿命化で延命するのか、統合するのか。切り離して考えることはできません。
第三に、学校の多面的な役割です。
学校は教育の場であると同時に、避難所であり、地域行事の会場であり、地域の記憶が集まる場所です。アンケートでも、防災拠点としての機能を重視すると答えた人が32.8%いました。学校がなくなることは、教育以外の機能も失うことを意味します。
第四に、決め方の不透明さです。
個別の学校が限界に達してから議論を始めると、その学校の保護者と地域だけが当事者にされ、感情的な対立が起きやすくなります。
第五に、スピードと丁寧さの両立です。
急げば反発を招き、待てば子どもが小規模校のまま卒業していく。どちらも避けられない緊張関係です。
■ 提案1 全市の「見通し図」を先に公開する
いま必要なのは、個別校の是非を論じる前に、全体像を示すことです。
学区別の児童生徒数推計を10年分作成し、どの学校が、いつ、どの規模になるのかを地図上で可視化する。国も、表と地図データを重ね、いつ・どこで・どのような課題が生じるかを見える化する手法を示しています。
これがあれば、「なぜうちの学校だけ」という反発は起きにくくなります。全市の問題であることが一目で分かるからです。
■ 提案2 判断基準を先に決める
個別の学校名から議論を始めるのではなく、一般的なルールを先に定めるべきです。
たとえば、小学校で6学級以下が3年続いたら検討に着手する、中学校で1学年1学級になったら選択肢の提示を始める、といった基準です。
基準が先にあれば、議論は「この学校をどうするか」ではなく「基準に照らしてどうか」になります。当事者の心理的負担は大きく変わります。
■ 提案3 統合以外の選択肢も同時に並べる
再編イコール統廃合ではありません。国内には複数の手法があります。
小規模特認校として、学区外からも通える特色ある学校にする方法。小中一貫教育により、小規模でも人間関係の幅を確保する方法。
学校選択制の運用を調整し、偏りを緩和する方法。分校化して校舎は残す方法。通学支援(スクールバス等)を条件に統合する方法。
アンケートでは、小規模校の維持を重視する回答も9.9%ありました。
少数ですが、この声に対する答えを用意しないまま進めるべきではありません。
なお松戸市には学校選択制があります。
小規模校がさらに選ばれにくくなる構造がないか、この制度の影響検証も必要です。アンケートでも学校選択制の見直しを重視する回答が14.5%ありました。
■ 提案4 空いた校舎の使い道を同時に示す
統合の議論が紛糾する最大の理由は、「なくなる」という喪失感です。しかし、跡地の活用を同時に示せば、話は変わります。
アンケートで複合化してほしい機能として挙がったのは、放課後児童クラブなどの児童関連施設が55.8%、図書館が50.5%、スポーツ施設が49.2%、防災施設が44.2%でした。
再編で学校が空き施設になった場合の有効活用を重視する回答も25.2%あります。
「学校がなくなる」ではなく「学校が別の形で地域に残る」。この設計ができるかどうかが分かれ目です。
■ 提案5 防災機能は必ず担保する
学校は避難所です。統合すれば、その地域から避難所が一つ消えます。
再編を検討する際は、避難所としての機能をどう維持するか、代替施設をどこに置くかを、必ずセットで示すべきです。校舎を残して防災拠点として使う選択肢も含め、防災部局と教育委員会が同じテーブルで議論する必要があります。
■ 提案6 合意形成の手順を明示する
アンケートで、意見把握の手法として望まれたのは、アンケートが59.3%、ワークショップと説明会がそれぞれ33.5%でした。一方、直接的な参加は望まないという回答も11.3%あります。
重要なのは、誰の意見を聞くかです。
統合の影響を最も受けるのは、これから入学する子どもとその保護者、つまり現在の未就学児の家庭です。
市も常盤平地域の幼稚園・保育園に通う子どもの保護者を対象にした調査を実施していますが、この視点を全市の議論でも軸に据えるべきです。
そして、決定の前に「いつ、何を、どう決めるか」の工程表を公開すること。
半数が初めて知ったという状況を繰り返さないために、これは最低限必要です。
■ 提案7 通学路への投資を先行させる
統合は通学距離を伸ばします。反対理由の最多も、子どもの通学負担でした。
アンケートでは、安心して通える通学路の条件として、歩道の整備や見通しの良さが85.0%、横断歩道や信号機などの整備が80.6%、人通りや地域の見守りが77.6%と、高い数字が並んでいます。
小学校の通学時間は20分以下が望ましいという回答が55.0%。この条件を満たせるかどうかが、再編案の現実性を左右します。
通学路の安全対策は、統合が決まってからでは遅い。先行して整備する価値があります。
■ 「する・しない」ではなく「どう決めるか」
この問題に、簡単な答えはありません。
小規模校を残せば、その学校の子どもは6年間クラス替えを経験しません。統合すれば、通学距離が伸び、地域から学校が消えます。どちらを選んでも失うものがあります。
だからこそ、議論すべきは「統合に賛成か反対か」ではなく、「どういう基準で、誰が、いつまでに、どう決めるのか」だと考えます。
市民の83.2%が適正化を進めるべきだと答えている一方で、半数以上が具体的な動きを知らなかった。この二つの数字の間にあるのは、無関心ではなく、情報が届いていないという事実です。
まずは全体像を示すこと。そこから始めるべきだと思います。
問い合わせ先は、松戸市教育委員会 みらい教育創造部 教育政策推進課(電話047-703-9811)です。市のホームページでは、アンケート結果の速報値も公開されています。