防犯カメラで、公園の犯罪は減るのか|研究と松戸市のデータで検証しました
2026年10月19日
子どもが遊ぶ公園で、不審な人を見かけた。夜の公園で、遊具が壊されていた。自転車を止めておいたら、盗まれていた。
事実、私は5歳になる娘と公園で遊んでいた時に不審者を目撃し、警察に通報した経験が2回あります。
この経験が松戸の防犯対策に力を入れようと思ったきっかけでした。

防犯カメラで、公園の犯罪は減るのか
公園は、誰でも自由に使える場所です。それは公園の良さですが、人目が届きにくい時間や場所があることも事実です。
私は、市内の公園に重点的に防犯カメラを設置したいと考えています。
犯罪を防ぐため、そして万一事件が起きたときに、すばやく解決するためです。
ただ、「防犯カメラを付ければ犯罪が減る」というのは本当でしょうか。
この記事では、国内外の研究と松戸市のデータをもとに、この仮説を検証します。
仮説:公園に防犯カメラを付ければ、犯罪を防ぎ、捜査にも役立つ
検証するのは、次の2つです。
・防犯カメラには、犯罪を未然に防ぐ効果があるのか
・防犯カメラは、事件が起きたあとの捜査に役立つのか
検証1 防犯カメラは、犯罪を防ぐのか
防犯カメラの効果については、海外で40年以上にわたって数多くの研究が行われています。
それらをまとめて分析した研究によると、防犯カメラを設置した地区では、設置していない地区と比べて、犯罪が平均で約16%減っていました。
ただし、効果は場所と犯罪の種類によって大きく違います。
最も効果が大きかったのは駐車場で、犯罪が約51%減っていました。
犯罪の種類で見ると、自動車や自転車の盗難など、物を盗む犯罪に効果がありました。
一方で、暴力的な犯罪を減らす効果は確認されていません。

2019年に発表された最新の分析でも、防犯カメラには「控えめだが確かな」犯罪を減らす効果があるとされています。その中で、次のことがわかっています。
・駐車場で、最も大きく安定した効果がある
・住宅地でも、犯罪が減っている
・映像を人が見守っている仕組みのほうが、録画するだけより効果が大きい
・照明の改善などほかの対策と組み合わせると、効果が大きくなる
日本でも、科学警察研究所の研究者らが、繁華街に防犯カメラを設置した前後の犯罪を分析しています。
カメラが多く設置された地区ほど、設置直後に犯罪が大きく減っていました。
カメラのある地区の周りでも犯罪が減る傾向が見られています。
つまり、防犯カメラは「どんな犯罪でも防ぐ万能の道具」ではありません。
しかし、自転車盗や車の盗難、いたずらのような犯罪には、一定の効果が期待できるのです。
検証2 防犯カメラは、捜査に役立つのか
こちらは、はっきりと「役立つ」と言えます。
神戸市は2020年度から市内に防犯カメラを設置し、2024年度までに3,000台まで増やしました。
神戸市の資料によると、2020年以降、「防犯カメラなどの画像の確認」が、警察が犯人を捕まえる手段として最も多くなっています。
千葉県警も、松戸駅や新松戸駅、新八柱駅などに街頭防犯カメラを設置しています。
2026年4月から6月の3か月だけで、178件の映像を確認し、事件の検挙や行方不明者の捜索などに活用しています。
暴力的な犯罪は、カメラだけで防ぐことは難しいかもしれません。
しかし、起きてしまった事件の犯人を見つけ、次の被害を防ぐことには大きな力を発揮します。
検証3 松戸市の犯罪は、いまどうなっているか
松戸市の刑法犯の認知件数は、2013年の5,996件から、2024年には2,703件まで減りました。11年で半分以下です。

ただし、2022年の2,608件を底に、2023年、2024年と2年続けて増えています。
2024年の犯罪の内訳を見ると、盗みに関する犯罪が1,929件と大半を占めています。
その中で最も多いのが自転車盗で、678件、盗みの3件に1件です。しかも、盗まれた自転車の68%は、カギがかかっていませんでした。

自転車盗は、研究で防犯カメラの効果が確認されている「物を盗む犯罪」です。
公園の駐輪スペースや入り口にカメラを付けることには、一定の効果が期待できます。
一方で、市は犯罪がどこで起きたのか、公園でどれだけ起きているのかを公表していません。
公園での犯罪の実態がわからないことは、この仮説を検証するうえでの課題です。
検証4 松戸市の公園に、防犯カメラはどれだけあるのか
松戸市には、都市公園などが404か所あります。
市は公道を撮影する街頭防犯カメラを318台設置しています。
そのうち、設置場所に公園の名前がついているのは67か所です。
公園の数にすると、およそ60か所、市内の公園の約15%です。

ただし、これらは公道を撮影する「街頭防犯カメラ」です。
設置場所は「○○公園 南側」のように、公園の脇の道路を指しているものが多く、公園の中を映しているとは限りません。
松戸市には、市民や事業所が設置したカメラの映像を市が管理する、全国初の「市民参加型街頭防犯ネットワークカメラ」の仕組みもあります。
しかし、公園の中を見守るカメラは、まだ十分とは言えません。
他の自治体は、どうしているか
東京都小金井市:公園の中にカメラを設置
小金井市は2023年から市立公園に防犯カメラを設置し、2026年までに4つの公園に15台を設置しました。
公園の入り口やトイレの周辺などを映し、近隣の住宅や公園の外を通る人は映さないようにしています。
映像は常に見ているわけではなく、警察から捜査のために文書で求められた場合にだけ提供しています。
兵庫県神戸市:3,000台から5,500台へ
神戸市は、通学路や駅の周辺などに防犯カメラを設置し、2026年度末までに5,500台に増やす計画です。
市民へのアンケートでは、91.3%が防犯カメラがあることに「安心」「どちらかといえば安心」と答えています。
実現可能性
〈費用面〉
松戸市の資料では、防犯カメラの設置費用は1台あたり25万円から40万円程度とされています。
仮に1台30万円で、1つの公園に2台ずつ設置するとします。
・毎年50の公園に設置すれば、年間3,000万円
・カメラがない残りの約340公園すべてに設置すれば、約2億円

このほかに、通信費や保守などの運用費がかかります。
一度にすべての公園に付けるのではなく、利用者が多い公園や、トイレや駐輪場がある公園、不審者の通報が多い公園から、段階的に進めるのが現実的です。
国や県の補助金の活用も検討すべきです。
〈プライバシー面〉
防犯カメラには「監視されているようで嫌だ」という声もあります。
松戸市はすでに、映像の保存期間を1週間とし、警察の捜査など法令に基づく照会があった場合にだけ外部に提供するというルールで運用しています。
公園のカメラも同じルールで運用し、カメラがあることを看板ではっきり示します。
公園の外の住宅を映さない配慮も欠かせません。
検証の結論:条件付きで、仮説は正しい
ここまでの検証をまとめます。
・防犯カメラは、自転車盗やいたずらなど、物に対する犯罪を減らす効果が期待できる
・暴力的な犯罪を防ぐ効果は限られるが、事件が起きたあとの捜査には大きく役立つ
・照明の改善や地域の見守りなど、ほかの対策と組み合わせると効果が高まる
・松戸市の公園でカメラがある公園は約15%にとどまり、広げる余地は大きい
つまり、「公園に防犯カメラを付ければ、犯罪を防ぎ、捜査にも役立つ」という仮説は、条件付きで正しいと言えるのではないでしょうか。
ただし、カメラだけに頼るのではなく、ほかの対策と組み合わせることが条件です。
松戸市がすべきこと
1 公園の中に、防犯カメラを段階的に設置する
利用者が多い公園、トイレや駐輪場がある公園、不審者の通報が多い公園から、優先して設置します。
2 照明や見通しの改善と組み合わせる
暗がりをなくす照明、見通しをさえぎる植え込みの手入れなど、カメラと一緒に公園の環境を整えます。
3 公園での犯罪の実態を公表する
公園でどんな犯罪が、どれだけ起きているのか。警察と協力してデータを集めて公表し、カメラを設置したあとの効果も検証します。
4 地域の見守りと一緒に
町会や自治会のパトロール、子どもの見守り活動と連携します。カメラは、人の目を補うものです。
子どもやお年寄りが安心して利用できる公園を
防犯カメラは、それだけで犯罪をなくせる魔法の道具ではありません。
しかし、正しく使えば、犯罪を防ぎ、起きてしまった事件を解決する力になります。
子どもが安心して遊べる公園。高齢の方が安心して散歩できる公園。
それを守るために、データに基づいて、できることから一つずつ進めていきます。
【防犯カメラの効果に関する研究】
Piza, E. L., Welsh, B. C., Farrington, D. P., & Thomas, A. L.(2019)「CCTV surveillance for crime prevention: A 40-year systematic review with meta-analysis」Criminology & Public Policy, 18(1), 135-159.
https://www.ojp.gov/ncjrs/virtual-library/abstracts/cctv-surveillance-crime-prevention-40-year-systematic-review-meta
Welsh, B. C., & Farrington, D. P.(2009)「Public Area CCTV and Crime Prevention: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis」Justice Quarterly, 26(4), 716-745.
https://ojp.gov/ncjrs/virtual-library/abstracts/public-area-cctv-and-crime-prevention-update-systematic-review-and
ニュージーランド司法省(2017)「CCTV Evidence Brief」
https://www.justice.govt.nz/assets/CCTV.pdf
スウェーデン犯罪防止評議会(Brå)(2018)「CCTV and crime prevention」
https://bra.se/english/publications/archive/2018-06-12-cctv-and-crime-prevention
島田貴仁・菊池城治・雨宮護・齊藤知範(2012)「街頭防犯カメラの犯罪抑止効果の分析」CSIS DAYS 2012 研究アブストラクト
https://www.csis.u-tokyo.ac.jp/csisdays2012/csisdays2012-ra-pdf/C14.pdf
【松戸市のデータ】
松戸市「松戸市犯罪発生状況(令和6年1月から令和6年12月版)」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/anzen_anshin/bouhan/hanzai_joho/hhjk_R6_12.html
松戸市「街頭防犯カメラ」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/anzen_anshin/bouhan/anzen_machidukuri/bouhan_camera.html
松戸市「市民参加型街頭防犯ネットワークカメラ設置者を募集します」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/anzen_anshin/oshirase/simincamera.html
松戸市「松戸市公園ガイドライン(概要版)」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/shisei/toshiseubi/kouen/kouenguideline.files/kouenguideline_gaiyou.pdf
【警察・他の自治体の事例】
千葉県警察「街頭防犯カメラネットワークシステムについて」
https://www.police.pref.chiba.jp/seisoka/safe-life_camera.html小金井市「市立公園における防犯カメラの設置運用について」
https://www.city.koganei.lg.jp/kurashi/479/ibentokouzi/since2023kamera.html
神戸市「神戸市カメラ 見る&守る」
https://www.city.kobe.lg.jp/a62348/cameratyokuei.html
神戸市(2023)「防犯カメラの効果検証」
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/62551/2023camerakouka.pdf
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