毎朝「おはようございます!」をくれる中学生たちの部活は、これからどうなるのか
2026年10月20日
平日の朝、私は松戸駅前に立っています。
まだ薄暗い時間から、通勤する人たちに声をかけ続けていると、ひときわ元気な声が返ってくることがあります。
「おはようございます!」
中学生です。部活動のバッグを肩にかけ、友だちと並んで駅前を通り過ぎていきます。
こちらが声をかける前に、向こうから挨拶をしてくれる子もいます。その一言で、朝の疲れが吹き飛びます。
挨拶がきちんとできる子どもたちを見ていると、学校や部活動で、先生や先輩から大切なことを教わってきたのだろうと感じます。
その部活動が、いま大きく変わろうとしています。

部活動の「地域展開」とは
これまで中学校の部活動は、学校の先生が顧問として指導するのが当たり前でした。
それを、地域のスポーツクラブや文化団体、民間の指導者などが担う形に変えていこうというのが、部活動の「地域展開」です。
以前は「地域移行」と呼ばれていました。
国は2026年度から2031年度までの6年間を「改革実行期間」と位置づけています。
この期間のうちに、休日の部活動は原則としてすべて地域展開することを目指しています。
平日については、国が課題を検証しながら、あらためて方針を示すとしています。
なぜ、こうした改革が必要なのでしょうか。理由は大きく2つあります。
理由1 子どもが減り、学校だけではチームが組めない
少子化で生徒が減り、学校によっては、野球やサッカーのように人数が必要な部活でチームが組めなくなっています。やりたい競技があっても、自分の学校に部がなければ、あきらめるしかありません。
理由2 先生の負担が限界に近い
国の調査によると、中学校の先生が土日に学校にいる時間は1日あたり2時間18分でした。そのうち1時間29分、6割以上が部活動の時間です。

専門外の競技の顧問を任され、休日も大会の引率に出る。部活動は、先生の長時間労働の大きな原因の一つになっています。
松戸の中学生の、およそ9割が部活動に
松戸市立中学校の部活動の加入率は、2022年9月の時点で87.7%でした。運動部に66.1%、文化部に21.6%の生徒が入っています。
運動部15種目、文化部14種目に、9,208人が参加していました。

松戸の中学生にとって、部活動はまさに毎日の生活そのものです。朝、駅前で挨拶をしてくれる子どもたちの多くも、部活動に打ち込んでいるのだと思います。
松戸市は、どこまで進んでいるのか
松戸市では、2022年に部活動の地域移行を話し合う検討会議が提言をまとめています。
そこでは、まず休日の活動から段階的に地域へ移し、2025年度末までを目途とする方針が示されていました。
一方、2026年度の市の教育施策方針では、有識者や団体関係者、学校関係者、保護者などから意見を聞く懇談会を設置し、持続可能な仕組みを作るとしています。
お隣の柏市は、2023年9月に全ての市立中学校で、休日の部活動の地域展開を始めています。
運営は地域のスポーツ・文化団体が担い、希望する先生は届け出をすれば休日に地域クラブの指導者として活動できます。

松戸市も懇談会を通じて丁寧に進めようとしています。ただ、2022年に示した目標時期を過ぎたいま、保護者や子どもたちは「うちの子の部活は、いつ、どう変わるのか」をまだ具体的に知ることができません。
家庭が心配していること
部活動が地域に移ると、子どもや家庭にとって何が変わるのでしょうか。
お金:会費がかかるようになる
学校の部活動は、基本的に指導料はかかりません。
しかし地域クラブになると、指導者への謝礼や施設の利用料などを、会費として家庭が負担することになります。
国は、会費を「可能な限り低い額」にすること、経済的に苦しい家庭の生徒への支援を「確実に実施する」ことを求めています。
移動:練習場所が遠くなるかもしれない
自分の学校ではなく、ほかの学校や公共施設で練習することになれば、移動の時間や交通費がかかります。
保護者の送り迎えが必要になる家庭も出てきます。
指導者:誰が教えてくれるのか
地域に、中学生を指導できる人がどれだけいるのか。安全に配慮し、子どもの成長を考えた指導ができる人を確保できるかが問われます。
国は指導者の登録制度や、子どもに関わる仕事に就く人の性犯罪歴を確認する仕組み(日本版DBS)の活用も求めています。
大会:試合に出られるのか
これまで中学生の大会は、学校単位での参加が基本でした。国は地域クラブや複数校の合同チームも大会に出られるよう、参加資格を見直すよう求めています。
地域展開は、チャンスでもある
心配ばかりではありません。地域展開には、子どもたちにとって良い面もあります。
・自分の学校にない競技や文化活動にも挑戦できる
・専門的な知識を持った指導者から教わる機会が増える
・ほかの学校の生徒や、地域の大人とつながれる
国のガイドラインでは、地域クラブも、平日は長くても1日2時間程度、休日は3時間程度、週2日以上は休む、という目安を守ることになっています。
勝つことだけを目指すのではなく、子どもがスポーツや文化を楽しみ、長く続けられる環境をつくることが目的です。
松戸市がすべきこと
1 「いつ、どう変わるのか」を早く示す
部活動ごと、学校ごとに、いつから、どのように地域へ移るのか。保護者と子どもが見通しを持てるよう、具体的なスケジュールを早く示します。
2 会費で部活をあきらめる子をつくらない
会費の上限を設け、就学援助を受けている家庭などは負担を減らすか、なくします。家庭の経済状況で、子どもがやりたいことをあきらめることがあってはなりません。
3 移動の負担を減らす
できるだけ子どもが通う学校や、近くの施設を練習場所にします。中学校区ごとに拠点を設けるなど、子どもが歩いて、あるいは自転車で通える範囲で活動できる仕組みをつくります。
4 地域の指導者を育て、つなぐ
地域のスポーツ団体や文化団体、市内の大学、企業、そして指導を希望する先生。松戸にいる人材を掘り起こし、研修を行い、子どもたちとつなぐ仕組みをつくります。
5 子どもの声を聞く
懇談会には、大人だけでなく中学生の声も届けるべきです。部活動の主役は、子どもたちです。
朝の挨拶を、これからも
毎朝、駅前で「おはようございます!」と声をかけてくれる中学生たち。あの元気な声の後ろには、部活動で仲間と汗を流し、先輩や先生から学んできた日々があるのだと思います。
部活動の形が変わっても、子どもたちが打ち込めるものを持ち、仲間と成長できる場所は守らなければなりません。
家庭の経済状況や住んでいる場所に関係なく、すべての子どもがやりたいことに挑戦できる松戸にしていきます。
明日の朝も、駅前で中学生たちの元気な声を待っています。
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