照井りょう(てるいりょう)千葉県松戸市

保育園に入れたのに、学童に通えない?|松戸市の「小1の壁」と高学年の居場所

保育園の入園が決まったときの、あのほっとした気持ち。けれども、子どもが小学校に上がるとき、多くの家庭がもう一度壁にぶつかります。

保育園は朝から夕方まで子どもを預かってくれました。ところが小学校は、低学年なら午後2時や3時には授業が終わります。
放課後、子どもはどこで過ごすのか。夏休みの40日間はどうするのか。

これが、いわゆる「小1の壁」です。その受け皿となるのが、放課後児童クラブ、いわゆる学童保育です。

■ まず、松戸市の学童の待機児童はゼロ

最初にお伝えしておきたいのは、松戸市の学童の待機児童はゼロだということです。

2024年5月1日時点で、松戸市の学童の待機児童は0人でした。近隣を見ると、船橋市は219人、市川市は205人、柏市は131人の待機児童がいました。
国が2026年5月時点で集計した速報値でも、松戸市の待機児童は0人です。

松戸市では、市内45のすべての市立小学校に学童があります。
定員は6,160人で、5,378人が登録しています(2024年5月時点)。待機児童を出さずに受け入れてきたことは、市と運営団体、現場の支援員の皆さんの努力の成果であり、きちんと評価すべきだと思います。

では、松戸市には「小1の壁」はないのでしょうか。数字をよく見ると、待機ゼロの裏側にある壁が見えてきます。

■ 壁1:全国では、待機児童の半分以上が高学年

全国では、2025年5月時点で1万6,330人の子どもが学童の待機児童になっています。
学年別に見ると、最も多いのは4年生の5,589人です。4〜6年生の高学年を合わせると9,254人で、待機児童全体の56.7%を占めています。

定員が足りない地域では、低学年が優先され、高学年は後回しになりがちです。
「4年生になったら学童を出なければならない」。これが全国で「小4の壁」と呼ばれている問題です。

■ 松戸市では、高学年も使える。でも、使っている子は少ない

松戸市の学童は、1年生から6年生まで利用できます。決まりの上では、高学年が締め出されることはありません。

ところが、松戸市の計画では、学童を利用する割合は1〜3年生が39.5%なのに対し、4〜6年生は11.0%にとどまっています。高学年の利用は、低学年の4分の1ほどです。

高学年になると、子ども自身が「もう学童に行きたくない」と言い出すことがあります。
民間団体が小学生の保護者に行った調査では、公立の学童を辞めた理由の第1位は「子どもが行きたがらなくなった」(36.7%)でした。その理由として多かったのは、「活動や過ごし方が合わない」「学童に通っていない友だちと遊びたい」です。

高学年の子どもが過ごしたいと思える場所がなければ、子どもは家で一人で過ごすことになります。
決まりの上で「使える」ことと、実際に「通いたいと思える」ことは別の問題です。

■ 壁2:夏休みの学童は朝8時から

松戸市の学童の開所時間は、平日が下校時から夜7時まで、土曜日と夏休みなどの長期休みは朝8時から夜7時まで(土曜は夕方6時まで)です。

夜7時まで開いているのは、働く親にとって心強いことです。一方で、夏休みの朝は8時からです。都内へ通勤する家庭では、8時に子どもを預けてから出勤したのでは間に合わないこともあります。
朝の時間帯は、松戸市の「小1の壁」のひとつです。

■ 壁3:保育料はゼロだったのに、学童は年12万円

3〜5歳の子どもの保育料は、国の幼児教育・保育の無償化で無料になっています。ところが、小学校に上がって学童を利用すると、松戸市では月額1万円の利用料がかかります。1年間で12万円、きょうだい2人なら24万円です。

利用料は、利用した日数にかかわらず、在籍していればかかります。
就学援助を受けている世帯は月4,000円、生活保護を受けている世帯は無料になる減免制度がありますが、それ以外の世帯にとっては、小学校入学とともに放課後の負担が一気に増えることになります。

■ 壁4:働き方によっては、利用できない

学童を利用できるのは、保護者が仕事などで昼間に家にいない家庭です。松戸市では、午前中だけ、または夜間だけ働いている場合は利用できません。
仕事を探している場合は、利用期間が2か月に限られます。

また、利用案内には「要件を満たしていても、利用状況や安全環境の整備のため、利用を待ってもらう場合がある」とも書かれています。
待機児童の数には表れない「待ってもらう」ケースがどれだけあるのかは、数字としては公表されていません。

■ 松戸市への提案

1 高学年が「行きたい」と思える放課後を
高学年向けのプログラムや、学童の中に高学年が落ち着いて過ごせるスペースをつくります。
あわせて、全小学校で行っている「放課後KIDSルーム」や、市が増やそうとしている児童館を、高学年が自由に立ち寄れる居場所として充実させます。

2 夏休みの朝を、もう少し早く
長期休みの開所時間を、朝7時半などに早められないか検討します。必要な家庭が選べる「早朝延長」の形も考えられます。

3 利用料の負担を軽く
保育園の無償化との差を少しでも縮めるため、きょうだいで利用する場合の軽減などを検討します。

4 「待ってもらっている」人数を公表する
待機児童ゼロだけでなく、利用を待ってもらった件数や、年度途中の申し込みにどれだけ時間がかかったかを公表し、本当の需要をつかみます。

5 子どもと保護者の声を聞く
学童を辞めた家庭や高学年の子どもに、なぜ辞めたのか、どんな場所なら通いたいか、ヒアリングに力をいれ運営の改善に生かします。

■ おわりに

待機児童ゼロは、松戸市が胸を張っていい数字です。けれども、数字がゼロになったことで、課題もゼロになったわけではありません。

夏休みの朝、出勤前にどうするか悩む親。4年生になって一人で留守番をする子ども。毎月の利用料に頭を抱える家庭。保育園の次に待っている壁は、待機児童の数だけでは見えません。

子どもが安心して過ごせる放課後を、低学年から高学年まで切れ目なく。松戸の放課後を、もう一段良くしていきたいと考えています。

参考文献

松戸市「令和9年度 松戸市放課後児童クラブ利用案内」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kosodate/matsudodekosodate/kosodatenavi/shogaku_chugaku/houkagojidou/annnai.files/r9riyouannnai.pdf
松戸市「令和9年度放課後児童クラブ(新年度利用)のご案内」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kosodate/matsudodekosodate/kosodatenavi/shogaku_chugaku/houkagojidou/annnai.html
千葉県「千葉県放課後児童健全育成事業実施状況(令和6年5月1日現在)」
https://www.pref.chiba.lg.jp/kosodate/hoikusho/houkago/documents/r6houkago.pdf
こども家庭庁「令和7年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(令和7年5月1日現在)」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/69799c33-85cb-44f6-8c70-08ed3a292ab5/c253a682/20251222_policies_kosodateshien_houkago-jidou_80.pdf
こども家庭庁「令和8年度 放課後児童クラブの実施状況(速報値)」(2026年7月)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/69799c33-85cb-44f6-8c70-08ed3a292ab5/65a48f05/20260710_policies_kosodateshien_houkago-jidou_87.pdf
内閣府「黄川田内閣府特命担当大臣記者会見要旨(令和8年7月14日)」
https://www.cao.go.jp/minister/2602_h_kikawada/20260714kaiken.html
松戸市「第3期松戸市子ども・子育て支援事業計画(量の見込みと確保方策)」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kosodate/matsudodekosodate/kosodatenavi/matsudokosodateshien/sesakukaigi/kodomokosodatekaigi/kodomo7-1.files/1-3.pdf
松戸市「第3期松戸市子ども総合計画 重点事業進捗管理表」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kosodate/matsudodekosodate/kosodatenavi/matsudokosodateshien/sesakukaigi/kodomokosodatekaigi/kodomo7-1.files/1-2-7-25.pdf
松戸市「放課後KIDSルーム」
https://www.city.matsudo.chiba.jp/kosodate/matsudodekosodate/kosodatenavi/shogaku_chugaku/houkagokids/kidsroom_start.html
放課後NPOアフタースクール「小学生の放課後の居場所に関する実態調査2026」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000092.000050603.html
秋田魁新報(共同通信配信)「学童退所『行きたがらず』が最多 民間団体が理由を調査」(2026年4月19日)
https://www.sakigake.jp/news/article/20260419CO0048/

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