【第2回】「うちの社員がスパイに?」日本企業が直面する外国人雇用の法的リスク
2026年4月8日
こんにちは。
闘う行政書士の照井遼です。
前回は、中国の国民や組織に情報活動への協力を義務付ける「国家情報法」の概要について解説しました。
【第1回】中国「国家情報法」が日本社会に突きつける見えない脅威 はコチラ
今回→【第2回】「うちの社員がスパイに?」日本企業が直面する中国人雇用の法的リスク
【第3回】平和な「姉妹都市交流」が抜け穴に?地方自治体を狙う情報収集の罠
【第4回】松戸市の事例で考える:国際都市と産学官連携に潜む特有の死角
【第5回】日本にはスパイを防ぐ法律がない!?早急な法整備が求められる理由
第2回となる今回は、この法律が日本企業にもたらす「見えないリスク」について深掘りします。
現在、多くの日本企業が優秀な外国人材を採用しており、中国籍のエンジニアや研究者が日本の最先端の現場で活躍しています。
これは企業の成長に不可欠な戦略のひとつです。
しかし、国家情報法の施行により、企業は「従業員の母国の法律」という思わぬリスクを抱えることになりました。
例えば、日本のハイテクメーカーで働く優秀な中国人エンジニアがいるとします。
彼は会社に忠誠を誓い、真面目に働いていますが、ある日中国の情報機関から「祖国のために、開発中の新素材データを提供してほしい」と接触を受けたとします。
日本の法律や企業の就業規則では、機密情報の漏洩は厳禁です。
しかし、国家情報法第14条では、情報機関は関係する個人に対し「必要な支持、援助及び協力の提供を求めることができる」とされています。
さらに第11条では、中華人民共和国の国の安全や利益に危害を及ぼす行為に関連する情報を収集し処理しなければならないと定められています。
「経済」や「科学技術」も国家の安全に含まれるため、日本の企業秘密がその標的になる可能性は十分にあります。
もしエンジニアが協力を拒んだ場合、どうなるでしょうか。
第28条には、法に従って行う情報活動を妨害した場合、警告や15日以下の拘留に処され、犯罪を構成するときは刑事責任を追及されると規定されています。
つまり、従業員本人がどんなに善良でも、日本のコンプライアンスと母国の法律(協力義務と罰則)の間で深刻な板挟みになり、不本意ながら協力者にならざるを得ないリスクがあるのです。
日本企業は「悪意あるスパイ」を警戒するだけでなく、自社の従業員が「強制的に情報収集の窓口にされてしまう」事態を想定し、重要な技術情報へのアクセス権限を物理的・システム的に厳格に分離・管理する必要があるのではないでしょうか?
また、諸外国には国家情報法などスパイを生む仕組みが存在することを踏まえ、外国人を雇用することで高まる情報漏洩リスクについて警鐘を鳴らしてまいります。